【土と水を制する者は、農業を制する】④播種直後の灌水

播種資料3

題名の通り農業を制するため、日々精進の記録。
今回は播種直後の灌水について考えます。





地床苗において播種直後の灌水は今後の生育具合を決める超重要な要素となります。地床苗の技術的難度の高さは、この播種直後の灌水を含めた「水やり」が簡単ではないからとも言えます。しかし逆に土壌水分を読み、種が上手く発芽できる様なやり方をマスターすれば、経済的にも体力的にも楽をすることができます。

さて、播種直後の灌水の目的をもう一度確認しておきましょう。
播種時直後の灌水は、水を十分土壌に含ませ種子の発芽を促すためのものです。その後も灌水を重ね、段々と表面に硬質層を形成させていきます。
播種資料1
▲我が家では8列を50mの畝に播種しています


播種作業の詳細な行程はここでは割愛しますが、とりあえず乾燥時を想定して畝を立て、播種機で種を撒いた後に寒冷紗を被せます。寒冷紗は、その後の天気が晴れが続く様なら白寒冷紗と黒寒冷紗、曇天や雨が予想されているなら白寒冷紗のみを被せます。白寒冷紗は灌水時の水圧により地表面が叩かれ硬くなり発芽を阻害するのを抑制するのと乾燥防止を目的としており、黒寒冷紗は晴天時により乾燥防止をしなければならないために使います。日照も遮りますが、発芽に関しては日光は必要としないので無問題です。
播種資料2
▲最初と2回目の灌水が全てを決める…!


播種後の灌水で最も重要なのは、絶対に乾燥させてはいけないことです。植物の種子というのは、水分や酸素など一定の条件を満たすと発芽のスイッチが入ります。殻を破り、芽を地表に出すまでにはその条件を維持しなければなりません。その条件の中で最も欠けがちなのが水分なのです一度水切れを起こしてしまうと、その種子は2度と発芽しません。この現象、いくら調べても専門用語的なものがなく、2次休眠とも違うそれを表現する適切な文言はついに見つかりませんでした。

播種直後の灌水が中途半端で水切れを起こすと、種子は2度と発芽しなくなる。

このことは地床苗を採用する農家はゆめゆめ忘れてはなりません。

播種後の灌水はスプリンクラー等は使わず、ホースと灌水ノズルを使用して人力でやります。均一に、かつあたかも雨が降るかの様に優しく与えなければならないので、ここは人の手で。そして定植直後の灌水の記事でも書きましたが、灌水は水量ではなく灌水時間で土壌水分を確保していくものですので、播種畝をゆっくり往復する等、相当に入念な灌水が求められます。


寒冷紗をめくって畝に指を突き刺して見てください。抵抗なくズボッと入るくらいがちょうど良い目安です。最初の灌水で満遍なくこの状態にしておくことが絶対です。最初の灌水で種子の発芽スイッチを入れ、2回目の灌水で発芽行程を促します。この2回目までの灌水が発芽率を決定する重要因子となりますのでくれぐれも注意しましょう。

十分な灌水で地中深部の湿った土壌と灌水土壌を繋げれば、その後の灌水によって段々と地表面が硬質化して畝の内部に水分を閉じ込めてくれるのでそう簡単には水不足にならなくなります。逆に灌水不足で畝の内部に水分が十分でないまま地表面に硬質層を作ってしまえば、その後いくら灌水しても満足に水分が浸透せず、生育遅延やヤケなど様々な弊害を起こし兼ねません。

これが、ある意味で地床苗の難しいところでもあります。しかし、土と水の性質と関係性を正しく理解すれば、地床苗でも均一かつ多量な育苗が可能となるのです。そしてこの知識が定植作業にも生きてくるのです。

私の地域は日本有数の農業地域ですが、周りの圃場を見てみると、残念ながら土と水を正しく理解できていない方が少なくありません。特に定植した後の姿を見ていると、それが如実に見えてきてしまうのです。灌水が不均一なら、生育差によってムラが生じます。また、幾度もの灌水によって雑草に埋もれてしまう圃場もあります。地床苗の衰退と共に、土と水の性質を正確に捉えられなくなり、後世にも伝え切れていないのではと危惧しているところです。

農業を生業として成功させるには、兎にも角にも収量を増やすことです。定質かつ収量の最大化を実現できれば、価格が乱高下する農産物であっても余程大丈夫なはずです。そのための栽培技術を獲得すること、それは新規就農であろうが親元就農であろうが同じことです。


今回はここまで。
ありがとうございました。



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