【技術記録】① ブームスプレーヤーを使用した定植後灌水

農業技術の記録。
今回はトラクターブームを使った定植後灌水について。
■ トラクターブームとは
様々な利点から我が家ではトラクターブームスプレーヤーを採用しているわけですが、その使い方にも工夫が凝らされています。まずはブームスプレーヤー(略してブーム)についてざっくり説明します。
▲このフォルム…イカしてません?
FOFD6640SLEに付けているブームはBSM1055sという型式で少し昔のものになりますがバリバリの現役です。片ブーム三段スライド方式で散布幅最大17.1m、タンク容量は1000Lです。
以下、トラクターブームを模式図に表して説明していきます。
■ ブームの転回限界
▲360度回りそうで回らない
片ブームは竿を格納している状態から最大270度まで転回することができます。通常は90度(右側)と270度(左側)で散布します。三角地形等では竿を動かして臨機応変な対応ができますが、ここで重要なのは自らの車体分の長さのうち右側は均一に散布できず、左側は完全に散布することができないということです。例として、定植後灌水を考えてみましょう。
■ 定植後灌水の動き
▲実はバックで進入する方が入りやすかったりする
典型的な定植後灌水を想定します。
定植が完了した圃場にタイヤの幅分植えずに通路として畝を残しておき、そこから後ろ向きに進入します。なぜ後ろ向きかは上述の通り、車体の長さ分散布することができないエリアができます。これを考慮せず前進でやろうとするとどうなるのか検証してみましょう。
▲これ以上進めへん…
圃場の端が法面でそれ以上前進できないと、そこからの散布は右側で不均一、左側はどうやっても散布できなくなってしまいます。その上、右側を前進散布したということは、左側は難易度の高い後進散布か、一旦開始地点まで戻るという手間のかかることをしなければならなくなってしまいます。ですから、ほとんどの場合でブーム灌水は後進散布から始めなくてはならないのです。
■ 後進は右、前進は左
▲後進は片ブレーキを使うと上手くいきます
最初右側を後進散布、帰りに左側を前進散布することで法面側は隅々まで灌水することができます。後進しながらの散布は確かに難易度が高いですが、右側散布時の後進は慣れれば問題なく行うことができる様になります。逆に左側の後進散布はというと、ブームの竿をコントロールする操作スイッチから油圧制御まで全て運転席の右側にあるため、左側にある竿の様子を確認しながら操作、しながら後進するというのは物理的に無理があるため熟練者でもほとんどやりません。
■ GIF画像でおさらい
▲初めてGIF作ったけどスゲェ〜
画像で基本的な作業の流れが掴めたと思います。要するに自分の出入りするスペースのない方向に背をむけて灌水を始めるということです。これは灌水だけでなく消毒作業も一緒です。
■ 枕うち
さて、ここまでくればあとは仕上げの「枕打ち」です。入り口から自分の車体分の長さのエリアが灌水できていませんね。なので、一度竿を納めて通路部分(この部分を枕と呼びます)に脱出し、通路の最奥まで後進します。そこから90度竿を転回して未灌水のエリアに灌水していくのです。
▲畝の方向に対して垂直なので結構揺れるから注意
ブームのタンク容量が丁度0になる様に灌水することはまず不可能なので、この枕うちである程度調整つするつもりで灌水スピードを決めていきます。枕部分、すなわち圃場の端は補植された株も多く通常部分より豊富に水分を必要としますので、2度3度往復して問題ありません。要領を使い切ったら無事ブーム灌水は終了です。
この一連の作業をスムーズにこなすことができれば、灌水及び防除の作業を大幅に省力化することが可能となります。
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