【技術記録】② 雑草を生やさない工夫

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農業技術の記録。
今回は農家の積年の課題、雑草について考えます。


結論から言いますよ。


水分のある土に植え、少し水をかけ、乾燥させる。


以上です。
これだけで理解されたらこの記事書いた時間を返してくれと言いたくなってしまうので、是非最後まで読んでくださいね。。



■ なぜ雑草は生えるのか

● 植物の発芽条件

植物の発芽には、空気温度の3つの条件が必要です。
農作物の種であろうが、雑草の種であろうが、この条件は変わりません。

● 実例検証

では、一般的な愛知県の冬どりキャベツの定植をモデルケースとして考えます。
条件の良い圃場で、今年の様に乾燥気味の状態を想定します。

施肥後にロータリーで耕起した後、畝を立て、定植機で苗を植えます。

その後しっかりと苗を活着させるために、スプリンクラーを立てたっぷりと灌水します。

翌日も晴れなら灌水、雨なら喜ばしい限りですね。



・・・何ら問題なく終わってしまいました。
しかしこれだと、この圃場は間も無く雑草だらけになってしまうでしょう。
全く喜ばしくありません。


何故か。

それは一連の作業が苗の定植と同時に雑草の播種作業を行ってしまっているからです。

土の中には多かれ少なかれ、雑草の種子が混在しています。ロータリーで耕起することで、土の中で眠っていた雑草の種子が地表面に出てくることで、定植時季もよろしく発芽条件の空気と温度が整います。そして、定植後苗に灌水するのと同時に、畝の地表面に出た雑草の種にもたっぷり水をかけてしまっているのです。翌日の雨や灌水を経て、抜群の発芽条件のもと雑草は意気揚々と発芽し出すのです。

土壌が湿っている場合に灌水をせず晴天を迎えられればまだ良いのですが、基本的に定植の後に水を十分に与え続けるのはイコール雑草の種の発芽を促しているに等しいのでやめた方が良いでしょう。ですが実際、キャベツの一大産地である私の地域でも上記の通り連続的に灌水をして毎年の様に除草剤やテデトールを多用している農家さんは少なくありません。

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▲正直これは酷すぎ。。気の遠くなる様な草取りか、結構な除草剤が必要にな草原に


■ 雑草を生やさないためには


そんなことは言っても、定植後は灌水しなきゃ苗が枯れちゃうじゃないかと思われるのが当然でしょう。その通りで、苗にとって灌水は必要ですが、その活着と雑草の発芽はトレードオフの関係の様にも見えてきます。水をかけなければ苗は枯れるが雑草は生えないし、水をかければ苗は活着するが雑草もセットで生える。この二択で迫られたら、水をかけるしかないのでしょうね。

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▲均一なサイズ、雑草なし!

しかし我が家ではこの二択以外の選択肢を持っています。だから、本圃での草取り(テデトール)は圃場見回りの時に1、2つ大きい草があれば引っこ抜くくらいで仕事として何時間もやったことは1度もありません。

その方法は、定植前に圃場に水分を与え最適な条件を整えるか、降雨の後の圃場に絶妙に残る水分量を見極め最適な条件で定植を行うことです。最適な水分量とは、土を握って離した時に、塊が少し割れる程度を言います。
要するに、後から水を連続的にかけると雑草が生えるなら、先に水を土壌にある程度含ませてから定植すれば良いということです。定植直後播種直後の灌水の記事でもお伝えしましたが、先に水分を含ませた方が、後から灌水で長々と水分を与えるより遥かに効率が良いのです。
方法としては、事前にスプリンクラーや多孔ホースで土壌に水分を与えてからロータリーをかけ、同じ様に定植するだけです。と言っても事前に灌水する作業も中々手間ですので、本当は降雨後の土壌に残った水分を見極めて定植作業に入るのが一番適切なやり方ではないでしょうか。

ここまでやれば、苗に適度な水分を与えつつ、雑草の発芽を防ぐことができますね。

と、安心したいところですがこれだけではまだ足りません。何故なら、地表面にある雑草の種子は、そのまま平気な顔をして恵みの雨を待っているからです。上述の通り定植が上手くいっても、その後雨が降り続いてしまえばあっと言う間に草原と化してしまうでしょう。


■ 殺し水


そこで、植物の種子にはこんな性質があるのをご存知でしょうか。

植物の種子は、一度水分をもらい発芽のスイッチが入った後に乾燥すると、2度と発芽しなくなる。

と言う性質です。これは植物の種子で言う一次休眠や二次休眠と似ていますが、この水切れによる発芽不良の現象を端的に表す語句が見つからないのが疑問です。
また、この性質ゆえに播種直後の水分は絶対に疎かにしてはならなく、この水分コントロールが難しいがために地床苗が減り、セル成型苗が台頭することになったとも考えられます。
話が逸れましたが、この性質を利用することこそが、真の意味で雑草の発芽抑制を叶えてくれると言うわけです。

以上から、最も理想的な定植条件は

① 土壌には適度な水分があり、
② 定植後翌日の天気は快晴、翌々日は雨(又は灌水)

です。
この条件下で定植後に少しだけ灌水し、雑草の種子に水分を含ませた後、翌日の日照で完全に永眠させるのです。そしてさらに、その次の日の雨でしっかり苗に水分を補給するのです。雨の予報が外れた時は、改めて人工灌水を行った方が良いかもしれません。特にセル成型苗は地床苗と比べ植物体が小さく弱いため注意が必要です。
種子に水切れを起こさせ殺す意味で、この少しの灌水の水を「殺し水」と命名しました。今ここで。使ってください(切実)


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▲別にグリーンダカラの回し者ではない

我が家では、定植後にトラクターブームで灌水することで地表面の雑草の種子を湿らせつつ、苗に補助的に水分を与え、翌日の晴天で種を殺しています。私の圃場で行うブーム灌水は、苗に水やりをするのがメインではないため、スプリンクラーや多孔ホースの灌水とはそもそも目的が違います。
また、一般的に雨の予報が出ると、その前日まで頑張って定植しようとする農家さんも少なくありませんが、原則それもダメで余程草の少ない圃場でないかぎり雨によって連続的な水分を得た雑草の種が順調に発芽してしまうことになります。


■ 雑草抑制への心構え


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▲典型例。畝の上には草はないが、水分を受けやすい溝の部分にはちらほら

これらの方法は、誰もがやることができますが、やはり効率面から考えればトラクターブームやハイクリブームを持っている方が実践しやすいと思います。また、事前に水分をある程度土に含ませると言っても多過ぎれば作業性が悪くなりますし、天気が急変すれば致し方ない場面にも出会います。イレギュラーもたくさんあります。土壌水分が多すぎる条件下で植えた場合は「殺し水」をせずとも丁度よく雑草の種が死んでくれますし、同様の状況で翌日が曇っていたりするといくらか発芽してしまったり。
時期的な考慮も必要です。例えば私は夏に裏作でたまねぎを作っていますが、4〜6月は気温の上昇や梅雨の影響があり雑草が生えやすい時期です。かつ、たまねぎはキャベツの様に外葉を広げ地表面を隠すことができないので、どうしてもこの時は除草剤に頼らなければなりません。
それでも、理想的な定植タイミングを心得ておけば、それに目掛けて計画を組むことができる様になります。自分の圃場の保水性や排水性を見直す契機にもなりますし、やりようはいくらでもあると思います。スプリンクラーや多孔ホースでも少量を見極めて灌水すれば均一とは行きませんができます。狭い圃場でしたら、撒水ホースで自分で灌水することだってできます。
それだけで高い除草剤や労力のいる草取りをせずに済むのなら、これほど簡単なものはないのではないでしょうか。もちろん、100%雑草を生やさないと言うのは無理(どんな方法でも無理)ですが、少しでも軽減できるならやる価値はあると思います。


●ブームを持っていない人のやり方

トラクターブームやハイクリブームを持っていない方も多いと思うので、具体例を上げておきましょう。

① 必ず翌日が晴れの日を選ぶ
② 最適な水分量がある圃場を選ぶ
③ 定植してから、スプリンクラーや多孔ホースで灌水する
④ 翌日は灌水しない
⑤ 翌々日午前中に灌水する

雑草の多い圃場では翌々日にラッソーフィールドスターゴーゴーサン等の土壌処理剤を散布すると効果的です。
②は定植後の灌水を多めにすればなんとかなる程度でしたら断行して良いと思います。
③が雑草の種に対する「殺し水」となり、繰り返しになりますがセル成型苗は植物体が小さく活着力が弱いためこの段階で丹念に灌水をした方が良いかもしれません。それでも十分、翌日に表面をカリッと乾燥させれば雑草の種を殺すことができるでしょう。この水分量に限ってはそれぞれの圃場の地質や傾斜、周辺環境によって変わりますので、その辺りは臨機応変に対応して下されば幸いです。


質問等あれば是非コメントしてください。


大事なのは水分の連続性を断ち切ること!


それでは今回はここまで。
ありがとうございました。






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