土壌消毒のコスト計算をしてみました。
※当ブログにおいては、全ての記事において基準は愛知県でつくるキャベツ・たまねぎの栽培技術・経験に基づく物ですので、全てが全ての方に当てはまるわけではないと言うことを前もってご承知の上お読み頂けると幸いです。それでも、大部分は同じことが言えますので、ご自分のつくる作物の栽培と照らし合わせて柔軟に咀嚼して頂く様お願い申し上げます。
質問者様からは10aあたりおよそ5万円(被覆資材込)という情報を得ていますので、この検証も兼ねたいと思います。
■ 土壌消毒はいくらかかっている?
それではまず土壌消毒に必要な資材を列挙していきましょう。
● 農ポリ 概算単価:¥22,000
農ポリはオークラのFC-50(0.05mm×600cm×100m)を50mの長さで2分割して使用します。なお、1シーズン16回土壌消毒を行い、農ポリは一枚あたり7回程度使い回します。
▲出典:三井化学アグロ株式会社
● 土壌消毒剤 概算単価:¥25,000
土壌消毒剤は三井化学アグロのドロクロール20Lを使用します。近年ではバスアミドのような微粒剤が普及してきていますが、うちでは色々な観点からクロルピクリン系の油剤であるドロクロールを採用しています。農ポリ1枚あたりの使用量は約8Lです。
うちの1回の土壌消毒作業で農ポリ被覆面積あたり
600cm × 50m = 300㎡
なので約3アールが1回分ということになります。
まず、農ポリ1枚で7回分使用できるので計算式は
( 22,000 × 0.5 )/ 7 = 1,571
よって、1回につき約1,571円かかっているということになります。
次に土壌消毒剤は1回で約8L使用するので
25,000 ×( 8 / 20 )
= 25,000 ×( 2 / 5 )
= 10,000
よって、1回につき約10,000円かかっていることになります。
農ポリビニルと土壌消毒剤を合わせると
1,571 + 10,000 = 11,571 これが1枚(3a)分なので
11,571 × 3.3 = 38,184
10aあたりのコストは ¥38,184 かかる計算になりました。
SNSより得た資材込みで5万円くらいという情報よりは結構安いという印象ですね。あくまでこれは概算ですし、うちのやり方での話ですので一概には言えませんが、錠剤タイプを使う方法やタゾメット系を使う方法と比較してみるのも面白いですね。
と、ここで終わったら”真面目に”計算しているとは言えませんので、もう少し詳細まで見ていきたいと思います。最後までお付き合い頂ければ幸いです。
土壌消毒には、農ポリビニルと土壌消毒剤の他に使用する物がいくつかありますね。そう、トラクターや土壌消毒機です。
▲普段使うロータリーが2400mmなので小さく感じますね
● トラクター
トラクターはISEKIのランドマックスで、1回の使用で約3Lの軽油を消費するものとします。また、ニプロロータリー(2.0m)の爪も実際にもう少し交換スパンは長いですが5年に1度全交換(44枚)するものとします。
▲私よりお歳を召しておられる消毒機。三菱が青い時代…
● 土壌消毒機
こちらもガソリンで動きますので、一度の使用にあたり300cc(0.3L)消費するものとします。
各項目のコストは
ニプロ純正 ロータリー爪 44本 ¥78,000
軽油 110円/L
ガソリン 130円/L
以上の条件より
トラクタ爪
= 78,000 ÷(16 × 5 )= 975
各燃料(軽油・ガソリン)
=(110 × 3 )+( 130 × 0.3 )= 369
10aあたりのコストなので
( 975 + 369 )×3.3
= 1,344 × 3.3
= 4,435
よって先程出した計算結果と合わせて
38,184 + 4,435 = 42,619
10aあたりのコストは ¥42,619 かかる計算になりました。
さらにもう一段考えましょう。人件費です。うちでは土壌消毒における最適人数は2人です。うち1人は最後の1時間のみでO Kです。この人数構成が最も効率が良いのです。
土壌消毒にかかる総労働時間を3時間、1人あたりの時給を1,000円と仮定すると
( 3 × 1,000 )+1,000 = 4,000 これが3.3回分なので
4,000 × 3.3 = 13,200 よって合計は
42,619 + 13,200 = 55,819
10aあたりのコストは ¥55,819 かかる計算になりました。
■ まとめ
以上様々な項目を入れて計算した結果をまとめますと、
土壌消毒10a あたり
① 資材(農ポリと土壌消毒剤)のコスト合計 ………………… ¥38,184
② 資材と消耗品(軽油・ガソリン・爪)のコスト合計 ……… ¥42,619
③ 資材と消耗品と人件費のコスト合計 ………………………… ¥55,819
いかがでしたでしょう、一般的に試算されるのは①ではないでしょうか。中々人件費まで組み込んだ試算まではしないと思いますが、労働力まで考えたコスト感覚を持つことは特に雇用者のいる農業を営んでいる方には重要なことではないでしょうか。もっともうちは人を雇ってはいないのですが、家族経営とて人件費を念頭に仕事を組み立てていくことは業務最適化や効率の最大化に繋がると思います。
他の試算ケースも見てみたいので、是非試算してみて頂ければ幸いです。その際は是非ここかS N Sにコメントを頂戴したく思います。また、感想や意見でも何でも良いのでコメントお待ちしております^^
今回はここまで。
ありがとうございました。
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