【独り言】#1 "カモ"

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これはしがない農家の独り言…


 農家は情報共有が壊滅的に苦手な業界です。だからこそ私が痛烈に感じるのは、農業資材や種子、機械等の農業を取り巻く「周り」との情報の非対称性により、何かしら”カモ”られているという感覚です。農家同士の共有も十分でないために、徒党を組むこともままなりません。

 その一つに、作物の病害虫への対応があります。ネットで調べればほぼ確実に「この農薬が有効」だとかの商品を売る情報ばかり。根瘤病にはネビジン!オラクル!黒腐病にはオリゼメート!カスミンボルドー!…そうじゃないんです。農薬は対症療法であって原因療法ではないんです。

 石灰欠乏症には液肥の葉面散布が良いだとかもそうですが、病害の出所を殆どの人が探ろうとしないか、探っても教科書的な、表層的な情報までしか辿りつくことができません。なぜなのでしょうか。これが先に述べた情報共有が壊滅的だからだと考えています。

 農業の「周り」の業界は、農家が様々な資材を購入し使用することで利益を得ています。ゆえに、それらのセクターから原因療法のメソッドが積極的・能動的に降りてくることは稀ですし、その情報を提供する担当者がいようものなら背任行為に等しいと言えるでしょう。近年、資材価格は高騰し続けており、物によっては従来の倍以上に膨れ上がっている資材も珍しくありません。例えばキャベツの地苗種子は、ここ数十年で軒並み2倍になってしまいました。

 これはセル苗の普及による需給バランスの変化によるものですが、今やメジャーなのはセル苗なのは疑いようもありません。しかしながら、セル苗は植物体が小さい育苗段階で定植します。小さいため丁寧な灌水が必要になります。これによって圃場にある雑草の種子を発芽させ、小さいセル苗は草の勢いに負けてしまうこともあります。ですから、除草剤を使います。生育の早い段階での本圃への定植のため、農薬の防除回数が増え地苗に比べより多くの農薬を用意しなければならなくなり、コストが嵩みます。種子もコート種子といった一手間加えた種になります。これもコスト増になります。

 セル苗ひとつとっても、その選択自体が高コストへ繋がってしまっています。それでもなぜ、ここまでセル苗が普及してきたのでしょうか。それが冒頭の壊滅的とも言える農家間の情報共有です。地苗は大きさを揃えて育苗すること、株間を揃えて上手く定植することに技術力が必要で、その難しさからくる農家の苦言を汲み取って生まれたのがセル苗になります。だが未だ地苗で優秀な結果を出している農家も中にはいます。

 確かに、地苗には「水」への理解と高い機械操作技術が求められますが、この情報が中々共有されません。頭を使い技術を覚えることに対して、他人に聞くという文化に乏しいという実情があります。せいぜい側から覗いて見様見真似をする程度で、それが万事上手くいくはずもありません。かくして技術の必要な地苗は衰退し、セル苗が台頭していきます。そこには資材、農薬、種子、肥料等のコスト増、そして高い機械の購入が連なっていくのです。

 簡便な方法と引き換えに、高いコストを支払うことになる、ということを忘れてはいけません。また、自分たちが足元を見られやすい業界にいるという自覚も必要です。農薬を使えば使っただけ効果は出るかもしれませんが、その対症療法だけではどんどん自分の首を絞めていっていることになりかねないのです。それらの原因を探る、その過程を見極める。これが後々自分を助けることにつながるかもしれません。

 わからないことは頭を下げてでも他所様に聞きにいきましょう。他産地への視察も怠ってはいけません。そうすることで我が家も今があります。それを実感する毎日です。
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